*本記事はアーツカウンシル東京在職時に執筆していたMedium Magazine「ヤギに手紙を届ける」から転載しました。
こういうこと書くと墓穴を掘るのですが……わたしの名前は漢字が珍しいので、ネットで検索すると、上位にしっかり本人の関連コンテンツが出てきます。
おかげで、インターネットの大海から人目に触れる岸辺へ、ありがたくない過去が打ち上げられることもしばしば。
たとえば13年前の写真。それは高校時代に通った予備校の合格者コンテンツで、あまりにもひどいガリ勉(?)スタイル。見つけた人はだいたい爆笑してくれます。お願いですから、検索しないでくださいね。(フリではありませんからね)
今日はそんなネタから、コミュニケーション担当という職種の責任と悩みについて。
少し前の記事で、「人がメディアであり、コミュニティの空気がブランドの時代」と、断言してみました。その地点からコミュニケーション活動をはじめると、当然、一番のメディアである「人」から発信してもらうことになります。自社コラム、外部メディア寄稿、イベント登壇、SNSへの登場などなど。
今では「オウンドメディア」という言葉もすっかり定着し、組織やプロジェクトメンバーが顔出し名前出しで発信することも一般的になりました。やっぱり、人の顔が見える情報は安心するものですよね。
また、人の顔をだして発信し続けていると、新しく入ってくるメンバーも最初から了解してるので、チーム全体の顔出し名前出しへの抵抗感はどんどん薄らいでいきます。「載せてくれ!」という人もガンガンやってきます。
だけど。
仕掛ける側のコミュニケーション担当者は、絶対に「人を前に出す怖さ」を忘れてはいけない、と、わたしは考えています。
わたしの受験生姿のように、一度コンテンツにしたら、いつまで残るかわからないのがインターネット。そしてその人の日常や人生は組織の外側でも続いています。
だから、よく見せすぎることも、手放しで出すことも、どちらも不幸を生むし、この仕事には人生級の責任が潜んでいます。
当たり前ですが、個人が個人として個人の覚悟でメディア的に振る舞うのと、組織が組織内個人に組織のテーマを背負ってもらってメディアとして仕立てるのは、まったく違う。
日常のしゃべり言葉なら気にならない表現が、とある文脈で活字になると急にキツくなることがある。誇張した成果は、リアルで接した時のギャップから火種を生む。頑張って用意した文章やプレゼンが、ひとから否定されてヤル気を削ぐ。そういうリスクは、伴走する担当者だけが気づいて拾ってあげれるものです。むしろそういう為にこそ、コミュニケーション担当は必要です。
インターネットの面白くて怖いところは、ただ「届く」だけじゃない。プロアマ混合なところなんです。
各分野の専門家や執筆者など、メディア発信のプロならば、自分で反論することもできるし、その他の情報量で圧倒して熱を冷ますこともできます。でも、多くのオーディエンスは、プロもアマも関係なく期待し、レビューします。
だから仕掛ける人は、しっかり最初から最後まで付き合うことで、サポートしなくてはいけません。お願いの仕方も、途中の品質管理も、出した後のフィードバックを集めて伝えることも。
と、わたしはずっと考えてきたけれど、それは理想論でもあって、現実はわたしの力不足で補佐しきれないこともあるし、読み間違えてメンバーに悲しい思いをさせたこともあります。忙しくて雑になったり、丁寧にやりすぎてスピードが下がったり。わたしの能力範囲でしかひきとれないのならいつまでもスケールしないし、感情移入しすぎるのも良し悪しかもしれません。もっとライトでもいいのかもしれない。共犯関係に持ち込めばいいのかもしれない。そもそも考え過ぎ? 人はそんなに弱くない? うーんうーん……。
この伴走と責任のバランスは、本当に、いまだに悩んでます。
悩みすぎて、どんどん大きくなる組織のコミュニケーション担当はもうわたしには無理だ、と、弱気になって卒業したのも、本音です。ついに書いてしまいましたが、そうなんです。どうしてもその悩みを横に置いておけなかった。
「コミュニケーション・デザイン」は耳触りの良い言葉だけれど、そこにはいつも、人と人の気持ちを扱う怖さがあるんです。
わたしにできるのは、触れた人々に関わって良かった!と思ってもらえるように、その場を楽しくすること。金銭意外のフィードバックを用意すること、心地よい組織や、自慢したくなるブランドを維持すること、そして自分も腹を割り身を削ること。
そんなやり方でやってきて、ちょっと疲れて、一回休んで。そしてまた再開しようとしているのですが、果たして答えはどこにあるやら。いまだ見つかりません。
今日はなんだか長くて、結論がでませんね。この問題は、まだまだ悩みそうです。でも悩むってことは、たぶん、大事なことなんです。
そして人のことより前に、自分のことなのかもしれない、と、思い、今日もMediumでぽろぽろと書いてみました。今週は、ここまで。
Text by
“機転をきかせて起点をつくる”「きてん企画室」の代表/プランナー。文化・デザイン・ものづくり分野の広報コミュニケーション活動をサポートしています。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。