これは誰から誰に向けての文章だろう? 読む人は発信者をどう見ているだろう?
広報テキスト*の確認で、わたしが一番気にするようにしているのは「立場」です。
*ブログや社内報、寄稿原稿、プレスリリースなど、コミュニケーションや情報発信を目的に書かれた原稿を、ひとまずここではそう呼んでみます
たとえば、こんな一文。
お金よりも大切なことがあることを、みんなに知ってほしい。
この一見美しいフレーズも、語り手と受け手の組み合わせ次第で、意味が変わってきます。
もしも「苦労を重ねて大成した作家が、出身校の中学生に講演で語る」場合なら、特に問題はないと思います(ちょっとステレオタイプすぎない? という指摘はおいておいて)。
だけどもしも「経営が悪化しリストラや減俸が続いている企業の代表が、社員に社内報で伝える」場合だったら?
責任逃れ的な態度と受け止められ、反感を買う可能性があります。わたしなら代案を考えます。(もちろんこの後にどんな文章が続くか次第ですが)。
こんな風に、同じフレーズでも誰がどこから何を言うかによって、印象はがらりと変わるもの。
誰かを傷つけたり、怒らせたり、貶めるために広報テキストを書く人はいません。ただ、書いた人の意図が必ずしもそのまま文章に収まってるとは限らないのです。
なので、コミュニケーションの視点でテキストを確認するときは、誤解を生まないように調整していくことも大切な役割かなと考えています。
ちなみに、広報テキストを確認する中で培われてきた要注意フレーズリスト(誤解を引き寄せがちな書き出し)というのも、わたしの中にありまして。
例をあげると、こんな感じです。
△△で知られる当社の意外な一面をご紹介します
(知られている前提だけど本当に? あと相手は本当にそこまで知りたいと思う? 関係性を要確認)
××の人なら、◎◎は気になりますよね!
(他者に対する一方的な決めつけは避けたいところ。どんな立場で書いているか要確認)
◇◇は□□だと思われがちですが、そんなことはないんです!
(「世間を代表する側」に立ってないか要注意。こういった一回下げて上げるような構成をとるなら、「わたし(たち)は◇◇を□□だと感じてました。が、あるとき思い直したんです!」といった主体的な立場の方がまだ誠実な場合も)
些細なことのようですが、ちょっとした言い回しにも態度は現れるもの。そして読み手は想像以上に敏感です。
本当にこれが伝えたいことかな? どの立場で誰とどんな関係を築きたいのかな?
ことばを通してひとつひとつ確認する(チームで話し合う)ことでまた、事業の姿勢も見えてくるのではないかなと思っています。
(以上、まじめでした。ではまた👋)
*追伸:ここで書いたのはつまり「文脈(コンテクスト)を大事にしよう」という話ですが、文化財団に勤務していた頃、「立場」をテーマに広報レクチャーを担当したことがあって。当時は「なんかいかついお題で依頼が来たぞ!」と思ったものの、大事なことだなと今更ながら感じたので掘り起こしてみました。3年ほど前ですが、資料はこちら(↓)
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“機転をきかせて起点をつくる”「きてん企画室」の代表/プランナー。文化・デザイン・ものづくり分野の広報コミュニケーション活動をサポートしています。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。