「面白い」に代わることば

「面白い」に代わることば

日記 - 2021.8.10

純粋な励まし言葉

荒井裕樹さんの『まとまらない言葉を生きる』を読んでいて、「どうやらぼくらが使う日本語には『純粋に人を励ます言葉』というものが存在しないらしい」という一文があり、はっとした。

ぼくらが「励まし表現」の代表格だと思っている言葉は、時と場合によっては、「人を叱る言葉」や「人と距離をとる言葉」に姿を変える。どうやら日本語には、「どんな文脈にあてはめても『人を励ます』という意味だけを持つ言葉」というのは存在しないらしい。

―『まとまらない言葉を生きる』荒井裕樹、2021年、柏書房、P.35

本当だ。「がんばれ」も「負けるな」も「大丈夫」も純粋な励ましとは言えない。週末、Netlixで観たドラマでも「『大丈夫』とか軽々しく言わないでよ! 」と主人公が何回も叫んでいた。そうよね、大丈夫って言われても困るときはある。わかる。

このことがすごく印象に残っていて。以来ずっと「純粋な励まし言葉」が心の宿題として刻まれている。

「面白い」に代わる言葉もない

そして今日、もうひとつ宿題が増えた。「『面白い』に代わる言葉」も見つからないのだ。

ときどき「面白いと表現していいことじゃないかもしれないけれど……面白いんです」と前置きして話すことがある。このときの「面白い」ってどうにか別の形で表せないだろうか。

とある対象にとても心惹かれる、興味を抱く、もっと関わりたいと思う、知的好奇心を刺激される、感化された、社会的にも個人的にも大切なことだと感じる。……そういうことをつい「面白い」と言い表したくなる。

でも対象によっては(特に重いテーマや問題、歴史を背負うものごとを指すときは)、「面白がる」という態度そのものに纏わりつく、軽々しさ、他人事感、消費的な印象がどうもよくない気がする。いや、実際よくない。よくないのだけれど、最大限の敬意と関わることへの覚悟、そして素直な高揚感を込めて「面白い」を伝えたいとき、どう表したらいいのだろうか

「わかる……。自分も『面白い』ってずっと感じてたんだけど、表し方には悩みます。確かに他の言葉がないですよね」と、今日話していた人と頷き合って、お互いの宿題とすることにした。次に話すときは「面白い」の代わりを持ち寄ろう。

なんだろう、なんだろうな。エモいとかキモいみたいに新語をつくるべき? それとも既存の言葉で何か当てはまる? ということで、ちょっとここに残しておく。思いつく人はこっそり耳打ちしてください。ぜひ。

[ Illustration by Atsushi Toyama ]

中田一会 (なかた・かずえ)

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中田一会 (なかた・かずえ)

“機転をきかせて起点をつくる”「きてん企画室」の代表/プランナー。文化・デザイン・ものづくり分野の広報コミュニケーション活動をサポートしています。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。

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