不得意なことは仕事になる(かもしれない)

不得意なことは仕事になる(かもしれない)

日記 - 2021.6.17

「なんでこの仕事をやってるんだろう」

たまにはきてん企画室の日記を書こうと思って筆をとりました。こんにちは。中田です。

最近、同世代の人たちと「実はこの仕事に向いていないんじゃないか」とボソボソつぶやきあったり、逆に若手の人たちから働きかたについて相談を受けたりすることが増えました。

自分としては発展途上だけど、下の世代からすれば参照先にもなる。ザ・中堅という感じがしますね。

「好きを仕事にする」「得意を仕事にする」というキャッチコピー的な働きかたは、どうやら幻想だと気づきつつある今日このごろ。いろいろな人と話し合うなかで思ったのは、そもそも不得意なことが仕事になっているのではないかということです。

たとえば私の場合。正直な話、長らくやってきた「広報職」も、最近はじまった「編集長職」も、めっっちゃくっっちゃ、不得意なスキルの組み合わせでできている仕事です。

こんなことを言うと、仲間や仕事相手に心配されそうですが、ことあるごとに「なんで私がこの仕事をやっているんだろう……向いていないし、申し訳ない」と思い詰めることもしばしば。

泳げなかったから、泳ぎかたを説明できる

で、そうやってボヤくたびにやってくる結論は「そんな私だからかな」です。

たとえば「広報職」を因数分解すると、重要なスキルには「人付き合い」や「コミュニケーション」が含まれます。「プレゼンテーション能力」もありますね。

私自身はそれらすべてが不得意でした。基本的には一人遊びで完結してしまう性格なので、もともと大人数で一緒に過ごしたり、相手の話題に合わせて自分の振る舞いを変えたりすることが下手。

小学4年生のとき「かずえちゃんは友達がいなくてかわいそうだから、友達になってあげる」と、友達だと思っていたチーちゃんに言われた衝撃は忘れられません。大学3年生のとき、「中田さんは熱心でまじめだけど、華やかな場で社交するのが嫌では、絶対に企画職にはなれない」とインターン先のデザイン会社社長から断言されたこともありました。

人混みが、無理。空気を読むコミュニケーションが、無理。他者が何を考えているのかわからなくて怖い。自分の意思をどう伝えればいいのかわからなくて疲れる。

とはいえそのままでは生きづらかったので、人と人が会話する様子をよーく観察して分析して、まねしてみて、失敗して、へこんで泣いて、また観察して……ということを繰り返して今に至ります。

でもそんな風に、後から身につけたことだからこそ、コミュニケーションそのものが仕事になっているのかなぁと思うのです。

最初から泳ぎが得意だった人は泳げない人に教えるのが難しい。でも、後から試行錯誤の末に泳ぎを覚えた人は、その手順を論理的に説明できるというか。そもそも天賦の才には負けるので、あの手この手でやりこなし、得意と不得意を組合わせた結果をなんとかご飯の種にしているという感じかもしれません。

とはいえ、「苦手」なことは人と仕組みに頼ろう

で、そういう話をしながらも、「不得意」と「苦手」はちょっと切り分けてもいいかなと思っています。

できないことをできるように頑張るのが偉い……という向上心至上主義は、それはそれであやういものです。

「不得意」は、得意ではないけれど頑張ってみたいと気が向くもの、伸びしろを自分で信じられるもの。「苦手」は、もうそれがあるだけで気持ちが憂鬱になり、手をつけてもいいことがなく、どう考えても頑張れないし、たぶん無理なもの。(と、勝手に私の中の辞書で定義しています。あくまで私見なので悪しからず)

そういう「苦手」を前に無理をすることはないな、と、思えるようになったのは中堅の良さかもしれません。苦手なことは得意な人にお願いしてしまうのがいい。お願いできるように仕事を組み立ててしまったほうが早い。(実際、努力の問題ではなく、人によって認知や行動で難しい項目があるということも近年ではわかってきました)

だから私は苦手な事務作業はどんどん人にお願いするし、まだまだ不得意な編集長業務はこれから得意になっていくのだと信じて頑張る。そうします。そんなぼやっとした日記でした。

不得意なこと、ありますか? 苦手なことはなんですか? 次に会ったときには、そんな話をしましょう。ではまた。

[ Illustration by Atsushi Toyama ]

中田一会 (なかた・かずえ)

Text by

中田一会 (なかた・かずえ)

“機転をきかせて起点をつくる”「きてん企画室」の代表/プランナー。文化・デザイン・ものづくり分野の広報コミュニケーション活動をサポートしています。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。

詳細プロフィール