これは……とんだ名作が生まれてしまったかもしれない……。
もはや何が本業なのか謎めいてきた今日この頃ですが、徳島県で実施している「伝わる広報ゼミ(あわ文化可能性創造事業)」で、新しいゲーム型ワークショップをやってみました。
ゲームの目的は、いつもの広報手段を一回手放して、あの手この手の“届ける”アイデアを絞り出すこと。つまり、アタマを柔らかくして広報と企画を同時に考える練習をしてみよう! というワークショップです。
徳島県庁県民文化課・伊澤弘雄さん、写真家・加藤甫さん、そしてきてん企画室の中田一会が共同で考えました。
とても盛り上がったし、さまざまな場面で使えそうなので、ゲームの詳細をお届けします。資料も公開しますので、よかったら遊んでみてください。
その名も「花見こいこいゲーム」といいます。
1. ゲームマスターからあらすじとルールを共有する
2. 順番を決めてアイデアを出す(2〜3周)
3. 出たアイデアを分類する
4. アイデアを因数分解して自分の事業と組み合わせてみる
・ゲーム説明用のスライド(こちらを使ってください)
・ハガキ大の白紙:人数×3枚程度(付箋やコピー用紙でもOK)
・お助け袋用の封筒:1枚(お助けカードを描いて入れておく)
・サインペン
・書画カメラ(なくてもよし)
大切なのは世界設定です。まずはスライドであらすじを共有しますので、しっかりついてきてくださいね。
いかがですか? なんとなく世界設定とルールは伝わりましたよね?
「花見こいこいゲーム」はこの設定に合わせ、いろいろなアイデアを出し合うところから始まります。広報手段を使うのはNGだけど、人を呼び寄せる方法は意外とあるものです。
参加者にはまず、5分間のシンキングタイムで思いつく限りのアイデアを手元に溜めてもらいます。その後、じゃんけんをして順番にアイデアを口にしてもらいます。
設定した周回(2〜3周がおすすめ)をクリアすることが目標。他の人とアイデアがかぶったり、ネタ切れしてはいけないので、途中から「お助け袋」なるヘルプアイテムも登場させて盛り上げます。
アイデア出しが終わったら、お互いの健闘を褒め称えます。(このゲームに勝ち負けはないので、ルールを守っているアイデアはすべて歓迎しましょう!)
そして次は、アイデアのスケッチを並べて全員で分類してみます。人に来てもらう手段にはどんな種類があるのか一緒に考えます。
今回のワークでは「ちんどん系(賑やかしの仕掛けを入れて注意をひく)」「フェロモン系(五感を刺激して惹きつける)」「誘導系(会場までに何らかの導線をしかける)」「目立たせる系(その名の通り)」などの分類が生まれました。
さて、ユニークな花見の世界から現実に戻り、最後にワークです。
出来上がった分類それぞれから、代表的なアイデアをゲームマスターが選び、チームごと1枚ずつひいてもらいます。(トランプのババ抜きのように裏返しておくことがポイント! アイデアをシャッフルするのが目的です)
そうして、ひいたアイデアから「花見」の要素を抜いて、自分自身の実際の仕事と組み合わせ、新たなアイデアを生み出して発表します!
図解すると、こういうことです。
正直、最初はここが一番難しいかなと思っていたのですが、広報ゼミでは、意外とポンポン出てきて嬉しかったです。
たとえばこんなアイデアが生まれました。みなさん要素の抜き出しが上手でびっくり!
【元のアイデア】公園で桜に関する唄をたくさん流してそれとなく人を呼ぶ
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【抜き出した要素】五感に訴えてイメージを膨らませる
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【足し算する要素】地域について紹介する東京イベント
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【ニューアイデア】地域でサンプリングした音や風景の動画など、五感を刺激する要素を上映し、地域の景色を五感で体験してもらう。(いつもはロジカルなプレゼンが中心だった)
【元のアイデア】事務局を100人に増やして事務局が花見をする
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【抜き出した要素】内部メンバーに目を向ける
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【足し算する要素】伝統工芸品「遊山箱」を普及する活動
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【ニューアイデア】普及イベントを行っている協会の会員とその家族だけで遊山箱を持って集まり、それぞれの使いかたを見せあって楽しむ。その様子を記録に残して外の人に届ける。(普段そういった機会を設けてこなかった)
【元のアイデア】桜を一本だけしっかりライトアップしてそこで花見をする
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【抜き出した要素】大事なものを絞って取り上げる
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【足し算する要素】地域の文化イベントをたくさん行うNPO活動
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【ニューアイデア】展覧会チラシで全作品をフラットに載せることをやめ、目玉となる作品を決めて取り上げる。
最後に出てきたアイデアを眺めてみるとわかりますが、企画(なにをやるか)と広報(やることをどう伝えるか)の境界は意外と曖昧です。
そう、つい忘れがちですが、広報に行き詰まりそうなときには、発信前に企画から見直したり、いつもとは違う手段に訴えてみることも大切なんです。
「花見こいこいゲーム」は、そんな風に発想を転換する体験を通して「まだまだやれることがありそう!」と自信を持ってもららうワークショップ。
広報に限らず、発想力の筋トレに、チームビルディングに……と、取り入れていただけたら嬉しいです。
本当に十人十色のアイデアが生まれて楽しかったから、またどこかで開催できるといいなあ。徳島の皆さん、ありがとうございました!
*補足1:今回の「伝わる広報ゼミ」で対象としているのは、徳島県内の地域文化に関わる小規模組織(NPOや文化団体、地域公社など)の方々です。企画と広報を兼務されている方が多いということもあり、このワークを組み立てました。
*補足2:わたしがゲーム中で使っている書画カメラ(手元を写すカメラ)は、台湾の教育ツールメーカー「IPEVO」社の「VZ-X」です。モニターとして協力させていただき、今回のワークショップのためにIPEVO社から実機を提供いただきました。設定も簡単だし、本体は軽いし、同時に録画(タイムラプス撮影もできる)もできたりしてとっても便利! あとかわいい。こちらのレビューはまた改めて。
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“機転をきかせて起点をつくる”「きてん企画室」の代表/プランナー。文化・デザイン・ものづくり分野の広報コミュニケーション活動をサポートしています。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。