こんにちは。きてん企画室・中田です。
千葉県柏市に引越して二週間が経ちました。自転車で10分ほど走ると「Bread & Roses」という書店があって、その入り口には「生きづらさを感じたら本屋へ」と張り出されています。
わたしはこの本屋さんにとても“懐いて”いて、心がざわっとしたらそこで一冊買って、250円のコーヒーを頼んで、お店の窓辺で読んでから家に帰ることにしています。(積読が、解消される、方法を、見つけた!!)
Bread & Roses
https://breadandroses-books-matsudo.jimdofree.com
わたしたちはなぜ本を読むのでしょうか。
理由のひとつは、先が見えなくなったり袋小路に陥ったりしたとき、本を読むことで、もうひとつの道や別の居場所があるのに気づいたりするからではないでしょうか。
本には人々の支えとなる古今東西の知恵やヒントが詰まっています。
店名のBread(パン)は生きる糧、Roses(バラ)は豊かに生きるための誇りや尊厳を表しています。「人が生きていくうえで必要な本を扱う」という意味を込めました。
性別や世代、国籍を問わず、生きづらさを感じている人、世の中のありように疑問を感じている人、人間らしい生活や社会を追求しようとしている人に寄り添い、次の一歩を後押しできるような本屋をめざします。
(Bread & Roses「ごあいさつ」より)
Bread & Rosesのこの文章を読んで、自分が肯定されているような、ここにいてていいような気持ちになってすごくほっとしました。
実際この書店にはアクティブな人も集まるし、静かに考えたり悩んだりしたい人もやってくるし、ただなんとなくたどり着いた人もいるようで、でもそれぞれがどうあっても等しく「お客さん」でいられる空気感があります。
そして毎度遠慮がちに話しかけてくれる店主の塩梅がほどよく、その感じにいちばん“懐いて”いるのかもしれません。ベースメントの大切なことははっきりしていて、でも場の受け入れは静かでフラットでこわくない感じ。
わたし個人としては、編集長を務めて5年目になる〈こここ〉もそんな場になるといいなとずっと思っていました。だから憧れるのかもしれません。
これはいかがですか、あれはどうですか、と、置いておく。待つ、差し出す、ときどき一緒に考える。入れ替える。ただし置かれた言葉を、誰かを殴る武器だけにはさせない。
このやり方が「弱い」と言われればその通りだけど、強過ぎる場所にはいられない人も触れられる状態にしておきたい。なぜなら実際に判断し決定し行動するのは、一人ひとりの意思だからです。ただ、そんなかたちでメディアが成り立っていたのは、ある種の「追い風」がここまであったからなのかなと最近は感じています。
おそらく多くの人と同様、ここのところのわたしは、参院選に向けて流れてくるさまざまな言葉の嵐に毎日やられていてお腹が痛いです。毎日夢見が悪いしふらふらしています。
だいたいの物事を「個」の語りからはじめて考えて組み上げていくタイプの自分には、大きな主語をベースにしたこの応酬のなかで、テンポよく言葉が継げません。おいおい編集長なのに? と言われそうだなと思いつつ、わたしの編集統括というのはそのようなモゴモゴしたスタイルなのです。すみません。
そしてモゴモゴしながらもBread & Rosesに寄って気になる本に手を伸ばしていくと、やっぱり触れたくなるのは、大きな仕組みに押しつぶされる個人の話、不均衡にも貼られたラベルの構造を紐解く記録、権利が侵される危機に抗う言葉たちです。本はゆっくりで力強くていいなぁと思います。
〈こここ〉のURLは、co-coco.jp。co-(ともに)とco(個)を組み合わせた言葉で、ドメインが指す場所はここ日本です。合言葉は「個と個で一緒にできること」。この島国で「個」と「個」が一緒にできることを模索するには、「個」として一人ひとりの権利が担保されないことにははじまりません。
その「一人ひとり」には、わたしも、あなたも、子どもも、高齢の人も、多様な国や文化にルーツのある人も、障害のある人も、さまざまなジェンダー、セクシュアリティの人も当然含まれます。(こういうときHIV啓発センター・ACTAさんの“We are already living together.”を心の中で唱えるようにしています)
そんなことを考えながら今日は、もともと住んでいた町の期日前投票所に向かっています。投票、してきます。不在者投票の手続きが間に合わなかったので……。
最後に。今週のこここのピックアップ記事をご紹介します。毎週かわる中段ピックアップコーナーには、実はそのときどきの裏テーマがあります。今週は衆院選に向けて、でした。
(何が言いたいんだという感じですが、いい本屋さんがあるので辛くなった人がいたら松戸のBread & Rosesおすすめだよということと、選挙行ってくるよということでした。そして差別は絶対に肯定しないし抗います、ということ。)
(イラスト:遠山 敦)
Text by
“機転をきかせて起点をつくる”「きてん企画室」の代表/プランナー。文化・デザイン・ものづくり分野の広報コミュニケーション活動をサポートしています。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。