編集物を編集すること。近況もろもろ。

編集物を編集すること。近況もろもろ。

日記 - 2023.10.17

こんにちは。きてん企画室・中田です。

秋です。お知らせでもだしましたが、イベントのハイシーズンでもあり、おおわらわの季節がやってきました。疲れやすく倒れやすく無理しやすい自分なので、今年はとにかく「つぶれない」を目標に頑張っていきたいと思います。つまり頑張りすぎないを、頑張る。

さて、自分が関わっている秋のイベント企画といえば、昨日、「ケアするしごと展 by マガジンハウス」のお知らせを出しました。

本展(渋谷)は11/11-12、巡回展(下北沢)は11/14-30で開催です。詳細はこちらから。

マガジンハウスに外部編集長として呼んでいただいて、ウェブメディア〈こここ〉の創刊をしてから2年半。いつか機会があったらおもしろいな〜と思っていたけれど、まさか〈anan〉や〈POPYE〉と合同企画ができるなんて。

同じ会社の元で動いていても、それぞれ独立したチームで(特に雑誌メディアは大変忙しそうですし!)日頃は関わる機会もありません。なので今回、厚労省の「介護のしごとの魅力発信事業」でご一緒できることになり興味津々で参加しました。

ちょうどお昼休みにコンビニでPOPEYEを買ってきました。今月号に特集「福祉って、こういうことだったんだ」が掲載されています。ananは先週号で掲載。こここ編集部では、取材先コーディネートなどを少しお手伝いしました。カルチャー誌やライフスタイル誌が福祉を扱うっていいなあとじーんとしています。

展示で何をするかといえば、3媒体それぞれが取材した「ケアするしごと」(今回は高齢介護)に関する記事紹介です。つまりパネル展。

ということで、つくりとしては非常にシンプルな催しではありますが、ところかわれば文体も取材方法も読者もかわるわけで、媒体を横断して展示パネルの編集をしながら「おもしろいなぁ」と何度もひとりで呟いています。

おもしろいんです、全然ちがって。ananにはananの、POPEYEにはPOPEYEの、そしてもちろんこここにはこここの文体やスタイル、スタンスがあって。同じ「ケアするしごと」を訪ねてもそれぞれまったくちがう。

編集物をさらに編集するというのはとても緊張する仕事ですが、思えばもともと専門としてきた広報職も同じような振る舞いをする職業でした。事業活動や成果物のなかから、そのとき届けたい相手に向けてストーリーを練って再編集するという点において。ある種不遜な振る舞いでもあると承知しながら、大胆に飛び込んでいくのが大事だったりする。

なので、パネル展の統括編集なんて仕事は初めてですが、どこかで懐かしさも感じる作業で、面白がって仕事しています。

そういえば、以前担当した「東京アートポイント計画 ことばと本の展覧会」の編集物も同じような方法でつくりました。200冊の本の中から、事業にとってキーになるフレーズを抜き出して、展示室の壁に掲示するプロジェクト。

「東京アートポイント計画 ことばと本の展覧会」
「東京アートポイント計画 ことばと本の展覧会」(2019年)の様子。写真奥の「ことばの壁」と展覧会のドキュメントブック企画・編集を担当した。詳しくはこちら
「東京アートポイント計画 ことばと本の展覧会」
200冊の本のなかから、共通したテーマを決めて抜き出しのフレーズを配置した。”編集物の編集”をしたことになる。このときはテーマ「アートプロジェクトの『アート』って結局なんだろう?」に設定して、選定した。

あのときと同じく、今回もパネル用に抜き出すフレーズの候補を絞る過程では、言葉を印刷した紙を切り貼りして、手を動かして考えています。バランスとか、見え方とか、一見関係ないフレーズの間に横たわる文脈とかを考えるためなんですが、これがなかなか楽しい。

ひとまず無事に準備が進むことを祈りながら日々を過ごしています。

「ケアするしごと展 by マガジンハウス」11月11日〜12日は渋谷で、14日〜30日は下北沢で開催します。よかったら遊びにきてください。

あと、またまったく別の話ですが『暮らしの手帖』で「コロナ下の暮らしの記録」を募集していて、応募したら掲載いただけました。「消えた弟」という手記を掲載しています。少しザラッとした、当時とても辛かった出来事について書いています。

でも、辛かったこととか困ったこととか、後から考えるとちょっと過剰だったり異常だったりしたんじゃないかってことって、気づくと忘れちゃうんですよね。忘れたことにするというか。

『暮しの手帖』75周年記念特大号。しみじみ素敵な内容でした。

そういうことこそ、ちゃんと残したいと思って応募しました。わたし個人としては、紙の本や雑誌の刊行物って「誰かの本棚に一冊は残る」というイメージというか、希望を抱いています。

そして何十年か経ったとき、日本語文化圏がまだ残っていたならば「このときもそうだったか」と振り返ることができるかもしれない。ないかもしれないですけど。

実名でいくかどうか悩んだのですが、「消えた弟」本人とも相談して、彼の失踪から感じたことを綴りました。もう4年も前のことなんですね。

ではではまた。きてん企画室の日記、たまに更新していきます。

おまけ。最近観たもの、読んだもの。

展覧会

映画

中田一会 (なかた・かずえ)

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中田一会 (なかた・かずえ)

“機転をきかせて起点をつくる”「きてん企画室」の代表/プランナー。文化・デザイン・ものづくり分野の広報コミュニケーション活動をサポートしています。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。

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