「文章の構成」ってなんだろう?

「文章の構成」ってなんだろう?

日記 - 2023.4.11

広報の現場でおきがちな「困った!」。もしかしたら解決に必要なのは「編集力」かもしれません。

「広報言葉のしあんラボ」は、広報と編集の間でうろうろ仕事をしている、きてん企画室・中田一会が“思案”しながら“試案”をだしてみる研究コラムシリーズです。実際に寄せられた相談内容をもとに、こうかな? ああかな? と“しあん”してみます。

第1回は、いわさわたかしさん(岩沢兄弟・よろずディレクション担当)のお悩みから。文章を書くのが苦手、言いたいことがあるのに伝わるように書けない。そんな人も多いのではないでしょうか。

【お悩み】「文章を書いてみたのですが、高校生の読書感想文みたいです。どう手直ししたら“大人らしい文章”になりますか?

「寄稿依頼を受けたので文章を書いてみたんですが、なんか高校生の読書感想文みたいで……ツッコミをください!」と連絡をくれたのは、クリエイターユニット「岩沢兄弟」のいわさわたかしさん

*きてん企画室では、岩沢兄弟の情報発信に伴走して3年になります。岩沢さん達は独特のアイデアとアプローチで家具や空間づくりを手掛けるユニークなクリエイター。考え方やプロセスがおもしろいので、コンテンツをつくるときはまずご自身で書いていただき、その後、きてん企画室で編集やブラッシュアップのお手伝いをしています。

「過去に担当したプロジェクト(「ROOM302」における「STUDIO302」構築プロジェクト)について、エピソード、思い出、ご自身の活動への影響や変化/あなたにとって「ROOM302」はどういった場であったか、期待していたことなどなどを書いてほしい」という寄稿依頼があったそうです。

最初にたかしさんが書いたのはこんな文章でした。

※依頼者の許可を得て掲載しています
ちなみに原稿にでてくる「STUDIO302」はこんな場所。岩沢兄弟がデザイン・制作したアーツカウンシル東京のオンライン配信用スタジオです。文章を読む人たちは基本的にこの場所を知っている方々なので、スタジオそのものの描写は不要と判断しています。

【しあん回答】「言いたいことがあるのは素晴らしいですね! 構成がわかりにくいので整理してみては?

情報発信のお手伝いをしていて「文章に悩んでいるので見てほしい」と言われたとき、その「悩み」の原因はだいたいふたつに分かれます。

  1. 言いたいことがあるのに(ありすぎて)、伝え方がわからない
  2. 言いたいことがそもそもない

2の場合は本当に難しく、編集というより構想に立ち戻って話し合う必要があります。でも今回は嬉しいことに1です。言いたいことはしっかりあるので、整理をすればぐっとよくなるはず!

まずは「構成」の整理から

ということで私はまず、文章の要素整理から着手しました。たかしさんの文章にマーカーをひきながら、言いたいことの色分けをしていきます。

実際のメモ。「活かしたい」「カットしてもいいかも」などの検討用に色をつけています。

この時点で順番は入れ替えていません。整理すると「前提→工夫1、2、3→まとめ」というシンプルな流れだとわかりました。こういう文章の流れを「構成」と呼びます。今回の場合は、この構成がもっとはっきりするように整理できるとよさそうです。

また、事情や背景を知らない人への補足情報も足りないようです。そこで加筆修正をさせてもらい、こんなかたちに編集しました。

どうでしょう。まだまだ推敲はできるものの、この時点でだいぶ整ったのでは?

前段の背景含めて情報を厚くし、想定読者に不要な細かすぎる描写はカット。ポイントになる言葉は「」でくくるなどの調整をしています。また、かなりベタな手法なのですが、「3つのポイント」と先出しして、3つに分けて説明しています

広報文において大事なのは「うつくしさ」よりも「伝わりやすさ」。「守破離」でいったら「守」が大事。文章の型はどんどん使っていきましょう。

「高校生の読書感想文」になってしまう理由

それにしても、たかしさんが心配していた「高校生の読書感想文みたいな感じ」とはどこから来ているのでしょうか。こういうことかな? と気づいたところをまとめてみました。

  1. 読み手を想定した補足が足りない
  2. 構成がふんわりしていて話がいったりきたりしている
  3. 言い切りが少ない
  4. 「でした」「ました」「したいです」など作文にありがちな語尾を多用している
  5. 「ということ」「することができる」など冗長な表現が多い
  6. 「だ・である」「です・ます」が意図なく混ざっている

上記のポイントを改善すると、しゅっとした“大人っぽい”文章になります。

それでも「言いたいこと」があるのは素晴らしい!

以上、今回の回答でした。

繰り返しになるのですが、広報において「言いたいこと」は、文章の旨さよりずっとずっと大切なことです。現場から生まれた、生の言葉ほど大事な素材はありません。

応援してくれる人を増やしたいとき、テクニックを駆使したプロの文章よりも、素朴に実直に積み上げた文章のほうが“届く”ことはよくあります。さらにそのメッセージにしっかりとした裏付けがあり、論理的に考えられていれば完璧です。

だから、岩沢兄弟のお仕事はいつも楽しいです。たかしさん、事例提供にご協力いただき、ありがとうございました! (実際に原稿が掲載された冊子はこちらのウェブページからお読みいただけます)

#広報言葉のしあんラボ ではお悩みを募集しています

情報発信や広報に関する言葉で悩まれている方、公開で添削されてもOK!という方は、ぜひこちらのフォームより投稿ください。掲載の確約はできませんが、回答の編集・添削料は無料です。匿名での投稿もOKです。

広報文の添削・編集業務も受付中

きてん企画室では、広報文の添削・編集業務や、広報活動に伴走するサービスも提供しています。事業広報や情報発信で、定期的にしっかり見てほしいという方は、一度ご相談ください。お問い合わせ窓口より受け付けています。

*基本的に企業や団体など組織広報に限ってお受けしています。また、スケジュール、予算によってはご希望に沿えないこともあります。(近日中にサービスメニューを公開予定)

中田一会 (なかた・かずえ)

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中田一会 (なかた・かずえ)

“機転をきかせて起点をつくる”「きてん企画室」の代表/プランナー。文化・デザイン・ものづくり分野の広報コミュニケーション活動をサポートしています。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。

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