嘘つきと悪人、仕事をするならどっち?

嘘つきと悪人、仕事をするならどっち?

日記 - 2017.7.21

嘘つきと悪人。

そりゃどっちもありがたくないのですが、どっちかをクライアントにコミュニケーションの仕事を受けないといけない、そうじゃないとお前の家族をどうにかしてやるぞという状況に追い込まれたら(どんな状況だ)、わたしは悪人を選びます。そしてそうなったら、いっそのこと、悪人らしい悪人、わかりやすく悪い人を選びたい。さらに贅沢が言えるなら、チャーミングな悪人がいいです。

チャーミングな悪人てこういうこと…?

理由はシンプルです。

人がメディアの時代には一貫性が大事だから。その人の纏う空気や価値観、伝えるときの語り口、反射的に現れる感情、選ぶ物事のセンスが明確なほど、コミュニケーション表現に落としやすく、人の気持ちを動かすものです。そのためには、メッセージを裏切らない行動と、何でもオープンにする姿勢が成功の鍵。

だから、嘘つきよりも悪人の方がいい。

その代わり、悪人にはしっかり悪人をやってもらわなくてはいけません。

悪さは極めてもらわないと。

まず、自らが悪人であることをはっきりと自覚し、どんな悪事を働くのか、何のために働くのかは個人の動機から社会的背景まで含めてディスカッションを重ね、徹底的に言語化してもらいます。当然、それら基本方針の全てをコンテンツにし、悪事を働いたら悪事レポートをコンテンツにして有限実行をアピール。悪事の度合いと影響がどうだったかインパクトリサーチをかけた上で反省点をまとめて次回の悪事に活かし、その過程もコンテンツに。悪のPDCAサイクルをぐんぐん高速回転しながら、徹底的に悪事を働いてもらわないとなりません。

万が一、うっかり善いことをしてしまったら、全力で謝罪リリースを出して、善行を覆す悪態をつき、次の悪事計画を発表してイメージを修正してもらいます。悪人に休みはありません。息つく暇ないほど常に悪いことを考え、悪いことをし、いつ誰に写真を撮られてアップされても悪人イメージを崩さないように振る舞ってもらう必要があります。

さらに、わたしが悪人付きのコミュニケーターとして伴走するなら、「饅頭っぽい」「餅に似ている」という、柔らかい食べ物に喩えられがちな外見はマイナスイメージなので、広報(わたし)の外見工事費と備品の要求をさせてもらいます。

海賊は悪いぞ怖いぞサインが明確でいいですね

と、ばかばかしい妄想を繰り広げてまで言いたいことは、一気通貫は大事、ということでした。(本当に?)

ただ、ちょっと最近不安なことがあります。

世の中が暗く動くとき、PRのようなプロパガンダ技術はおおいに必要とされるもの。

今日は冗談で「迷わず悪人を選ぶ」と書いてみたけれど、実際のところ、何が悪で善で何が嘘で本当なのか、自ら考えて選び取る教養と判断力は基本スキルとして身に着けねばならないと思います。もちろん、そんなの相対的で時代や立場によっていくらでも変わるんだけれども、だとしても後悔しないために。

以上、まじめでした!

中田一会 (なかた・かずえ)

Text by

中田一会 (なかた・かずえ)

“機転をきかせて起点をつくる”「きてん企画室」の代表/プランナー。文化・デザイン・ものづくり分野の広報コミュニケーション活動をサポートしています。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。

詳細プロフィール